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小説・イジメ解決編


49。




 あれから、2ー2の教室で待機していたリサちゃんとハンナ、それからツボミと合流しました。
「これから、イジメグループに接触するよ」
 あたしは努めて険しい声で、6人に声をかけました。
 イジメグループは、みんなソフトテニス部員でした。陽が沈む時刻、そろそろ帰り始める頃合いでしょう。
 荷物を持って、下駄箱を通過。テニスコートへ向かう道中で、女子の集団がこちらへ歩いてくるのが見えました。
 車裂さんが、あたしの腕に身を寄せてきます。あたしはなにも言わず、一度ぎゅっと抱きしめて、耳元で「大丈夫だから」とささやき、女子の集団に正面から対峙します。
 先頭は、低身長で巨乳の秋咲さん。なぜかあたしの闘争本能を刺激するスタイルです。
「秋咲さん、だね」
 あたしの呼びかけに、立ち止まる彼女。それを肯定と受け取り、交渉を、渉談を、開始します。
「あたしは実戦科学部の高橋。そして、この娘‥‥車裂さんの友達。なにが言いたいか、わざわざ説明しなきゃだめ?」
「‥‥なにあんた」秋咲さんがたじろぐように(そりゃあ、魔王が相手ですから)言葉を紡ぎます。
「だから、この娘の友達だってば。因縁付けていじめてくれちゃってるみたいじゃない。発端は宮代さんだっけ?」
「因縁ってあんたね、なにも知らないくせに勝手なこと言ってんじゃないわよ」
 後ろの女子たちが口をそろえて「そーよそーよ!」とヤジを飛ばしてきます。あんたら雛壇芸人か。
「なにも知らないくせに‥‥ねぇ。なにも分かってないのは、あんた達だって、気づいてないの?」
「何ですって‥‥?」
 サッと顔を赤らめて不満を呈する秋咲さん。まあまあ迫力のある凄み方ですが、その程度で怯むほどヤワな神経していません。こちとら、何度となく銃口向けられてるんですから。
「じゃああんた達は、なにを知ってるって言うのよ!」と、眼鏡をかけた茶髪っぽい髪色の女の子が声を荒げます。こちらの事前情報と照らし合わせて、おそらく宮代さんでしょう。
「宮代さんは事の真相を知ってるもんだとま思ってたけど、違ったんだね」
「だから、なにを知ってるっていうのよ!」
 あたしが合図すると、後ろに控えていたハンナが“さいせいくん”を手にしてあたしの隣に歩み寄りました。
 そして、スイッチオン。
 ゲーム機のような装置から聞こえてくるのはあたし達と舞浜先輩の会話。もちろんあたしの声は女声でした。
 そして次々と明かされる真実。さらには彼の女癖の悪さや最悪の倫理観。最後にはあたし達にナンパまでする始末。
 顔を赤くして憤っていた彼女たちは、今度はみるみる蒼白になっていくのが見て取れました。みっちゃんやメグ姐、車裂さんまで呆れかえってため息をもらしていました。
「そんな‥‥こんなことって‥‥」
「恋は盲目、なんて言うけどね。ある意味被害者と言えなくもないけれど、あなた達以上の被害者がいるんだから、被害者面はやめてよね」
 あたしは追い打ちをかけてたたみかけます。この動揺こそが最大のチャンス。開き直る前に、とどめを刺します。
「車裂さんはね、あんた達に抵抗できなかったわけじゃないの。かわいい顔は生まれつきだけと、それでも自分が原因といえば原因だから、甘んじて受け入れてやっただけなのよ。そこに付け込んで、嫌がらせをするなんて、舞浜先輩を責める権利があると思うの?あたしに言わせればどっちもどっちだわ」
 秋咲さんも宮代さんも、他のみんなも、何も言えずに、ただ震えて俯いてしまってます。
 気分がいい。ああ気分がいい。
   あと一歩。
 唇が無意識に歪む。
   あと一歩。
 悪いことをした人間は。
   あと一歩で‥‥
 壊されても・・・・
「言いたくないけどね、こればっかりは言わせてもらうわ。あんた達は‥‥」
「高橋さん!」
 ビクリとして、我に返りました。声量が大きかったので、一瞬誰の声か分かりませんでした。
 車裂さんです。
「もうやめて。もういいから。大丈夫だから‥‥」
 彼女を向き直ると、瞳をうるませてあたしにすがるように手をかけていました。
 そして今まであたしが責めていた彼女たちは、今にも泣きそうか、あるいはすでに涙を流していました。
 車裂さんは足を踏み出し、あたしとハンナの脇を越えて、秋咲さん達の前で立ち止まりました。
「つらい思いをさせちゃってごめんね。わたしがなにも言わないから、余計に誤解を生んじゃったみたいで‥‥」
 つらい思いをしたのは、自分なのに。
「前までは、このままいじめられたって良いって思ってたんだ。ばかだよね。自分だけの問題だって思ってたんだ。でも、こんなわたしでも、心配してくれる人がいたから‥‥‥」
 今にも崩れ落ちそうな彼女たちを、慈しむように眺めて、
「ごめんなさい。わたしを、ゆるしてください」
 返事はありませんでした。ただただ彼女たちは俯いて、震えているだけでした。。



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