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小説・イジメ解決編


50。



 昼休みの2ー2の教室で、“僕”はハンナと理沙子ちゃんと向かい合って話していました。主に僕が、いかにして車裂さんを説得したのかを。
「要するに、似たもの同士だったんだよ。だから彼女の考えが分かったし、彼女も僕の心中が知れたんだよ」
 結局は、そういうこと。
 ツボミの読みは当たっていたということでしょう。認めるのは癪ですが。
 理沙子ちゃんが不機嫌そうに、
「私たちとはろくに話が成立しなかったよ」
「うん」
「でも、アキくんは一瞬で気持ちが通じ合ったんだよね」
「うん」
「つまり、私たちとアキくんも、気持ちが通じてないんだね」
「うん‥‥‥‥、えっ?」
 あれれ、雲行きが‥‥
「そんなまさか!むしろ、車裂さんとはいろんな部分で正反対だったんだよ!?だから、僕と理沙子ちゃんたの波長はフルスロットル!っていうか!」
「ふーん」
 ああ!「ふーん」が出てしまいました!ちくしょう、今回良いところを見せられたと思ったのに、むしろ嫌われてしまいました‥‥!
 しかし理沙子ちゃんに限って、僕と波長が合わないくらいで不機嫌になるなんて、そんな狭量な器ではないはずです。きっと何か、僕の知らないところで、なにかをやらかしてしまったのでしょうか‥‥?
「‥‥ちょっと、車裂さんたちの様子を見に行ってみようよ」
 理沙子ちゃんのことばかり考えても始まりません。あの後の経過を確認してみることにしました。僕は不機嫌な理沙子ちゃんとハンナを引き連れて、2ー1へ向かいました。
 中を覗くと、美智子ちゃんとメグ姐さん、それから見覚えのない女の子2人と楽しそうに話す車裂さんを見ることができました。
「よかった、友達ともやり直せてるみたいだね」
「ええ。それに、あの後からイジメはぱったりとなくなってしまったということですよ。完全解決ってとこですね」
 あれこれと奔走した甲斐があったってもんです。
 ちなみに、舞浜先輩はたまに廊下ですれ違いますが、みるみるやつれていってます。
「これもみんなのおかげだけど‥‥最初に言い出したのはハンナだったよな。えらいぞー」
 冗談めかして、というか冗談のつもりでハンナの頭を撫でてやったのですが、意外に抵抗はされませんでした。
 と、そこで。
「あ、アキりん!」
 美智子ちゃんがこちらに気がつき、大げさに手を振ってきました。僕はそれに応じながら、教室に踏み込みます。
「うまくやってけてるみたいで安心したよ」
 そう言うと、なぜか顔を赤くした車裂さんが立ち上がって、
「はい、あ、明仁、さんのおかげです!」
 あれ?女の時は高橋って呼んでなかったっけ?
 まあいいですけど。
「始めに車裂さんを助けたいって言い出したのは、ハンナと理沙子ちゃんだよ。僕はほんのちょっと力を貸しただけさ」
 謙遜ではなく、そんな気分でした。結局、僕は何もしていません。彼女たちが勝手に変わっていっただけの話です。
 僕が少し物思いに耽っていると、車裂さんが先ほど喋っていた見知らぬ2人のうち1人が、興味深そうに僕のことをねめあげるようにして見て、
「へー、男の子と全然話せないこの子がね~。さすがは王子様ってわけだね」
「王子様?」
 魔王の間違いでは?
「と、ともちゃん!」
「あはは、ごめんごめん!」
 ああ、そういうことか。なるほど。
「そうだよね、男の僕が、車裂さんにしょっちゅう会いに来てたら、誤解されちゃうよね」
「え、あの‥‥?」
「わかった、うん。僕がどうこうしなくたって、この分なら心配なさそうだしね。もう1組に来るのは最後にするよ」
 せっかくうまく行きそうな彼女の邪魔をするわけにはいきません。後のことは、1組の人に任せましょう。うん、それがベストな選択です。
「え、ちょ‥‥」
 車裂さんは動揺しているようでした。もしかして、僕を追い出したみたいな負い目を感じているのでしょうか。やはり、優しい娘です。
 僕は踵を返して、
「じゃ、またいじめられちゃ、だめだよ。元気でね。“さよなら”」
 彼女に迷惑にならないように、邪魔者は退散するとしましょう。
 しかしすかさず、僕の右手が強く掴まれました。
 車裂さんです。
「ちょっと‥‥。他の人もいるんだから、誤解されちゃったら大変だよ?しかも魔窟の部長で魔王で執敗者で、クソヤロウ相手に‥‥」
「‥‥‥」
「ど、どうしたの‥‥?泣きそうだよ?」
 というか、すでにほとんど泣いてます。大粒の涙が目尻でふるふる揺れています。
「‥‥‥」
「あの、車裂さん?」
 僕がどうしたものかと困り果てていると、でかいため息をついて、メグ姐さんが立ち上がってこちらに寄ってきました。
「あのよ、アキ。例え誤解されてもいいから、たまには1組に来いよ。お前は退屈しない人生送ってるみたいだしな。土産話ができたら、アタシのところに来い。わかったか?」
「いや、でも‥‥」
「 わ か っ た な ? 」
「‥‥お、押忍」
「よし、行ってよし」
 お許しが出たため、僕らは1組を後にしました。
「じゃあ、車裂さん、“またね”」
「‥‥! は、はい!!」
 なぜか車裂さんは、輝かんばかりの笑顔でした。




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