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小説・イジメ解決編・完


51。




 家路についた僕ら‥‥僕、ハンナ、理沙子ちゃん。
「アキくん、今回は完全勝利ってとこなんじゃないの?」
 理沙子ちゃんがおもむろに、そんなことを言ってきました。
 剛は止めたが、天慈くんは帰ってこない。
 銀字とは対立しっぱなし。
 四谷はぜんぜん改心していない。
 では車裂さんは?
「イジメはなくなった。本人の考え方も変わった。友達もできた。確かに及第点ではあるかもね」
 しかし満点には程遠い。
 つまり。つまりこれは、僕が関わった頻度が低いほど、結果が思わしいものになるということではないでしょうか。
 今回、僕が1人で突っ走っていたら、きっと最悪な結果になっていたことだろうと確信しています。
「みんなのおかげだね」
「またまた、謙遜しちゃって」
 謙遜なんかじゃ、ないんだけどね。
 ハンナが疲れた顔で肩を落としながら、
「人を1人助けるのに、こんな労力を使うとは‥‥」
「ハンナは世界を救おうとしてるんじゃなかったっけ?」
「今は逆の立場みたいになってますけど、諦めたわけじゃありませんからね」
「‥‥そっか」
 執敗癖は遺伝してないといいなぁ、なんてことを曖昧に考えながら、僕は空を仰ぎました。
 執敗者。
 僕はあの執敗者に、「僕とは正反対だ」みたいなことを言った気がしますが、それは意図的な嘘でした。僕も結局、過去のたった一つの敗北から、脱せていないのですから。つまりは、車裂さんと僕は、同類で同胞で、同族なのです。
 剛?銀字?四谷?‥‥そんな敗北、問題にもなりません。腹にため込んだその完全敗北は、僕という存在の根底を揺るがして、崩して、打ちのめしてしまうほどのものです。そして僕は、ちっとも改心していない。
 はたして、それを知ってなお、彼女たちはこうやって並んで歩いてくれるのでしょうか。
 そんなわけがない。
「いやぁ、それにしても、久しぶりに疲れた!これなら実戦科学部のほうが数段マシだよ!」
 僕はわざと大きな、元気な声を出してマイナス思考を吹っ切ります。
「そういえば、最近は実戦科学部に行ってませんでしたよね」
「そうだね、あいつらもさすがに寂しがってるかもしれないから、明日は早めに行ってやろうかな!」
 あの魔窟に。異形共の根城に。あそこにいると、心が落ち着いてマイナス思考はなりを潜めてくれます。もしかすると、最近気分が沈みがちなのはそのせいかもしれません。
 ‥‥‥いずれ見えてくる、理沙子ちゃんハウス。
「それじゃ、理沙子ちゃん、また明日!」
「うん、お疲れ様だね」
「ほんとにね‥‥」
「うふふ」
 ここで初めて、理沙子ちゃんは無邪気は、いつもの笑顔を見せてくれました。
 そして玄関の鍵を開けて、扉の向こうに消える直前に振り返って、
「アキくん、今回はホントにかっこよかったよ!」
 と言い残して、扉が“パタン”と閉じました。
 惚れてまうやろーーー!!
 ‥‥って、もう惚れてますけどね。10年前くらいに。
 やっとこ家に到着すると、珍しくツボミが帰っていないようでした。(あいつは、サッカー部員が「あいつは最後まで部活に参加してた」と言ってる日に、僕と家でゲームしてたりします)
「あ、お帰りなさい、パパ!」
 とことこと廊下を駆けてくるかわいい娘(?)を、僕は抱きかかえて高い高いしてあげました。
「ただいま」
 ‥‥‥あっれー、小学生ってこんなに重かったっけー‥‥?
「‥‥まるで父親と娘のようですね」
 ハンナがどこか不満そうに呟きました。
「僕とハンナは兄妹みたいなもんだからね」
「兄妹だったら殺せたんですけどね」
 おいおい‥‥。
「それに、“まるで”じゃないよ。少なくとも僕は、親子のつもりだよ」
「‥‥血がつながってませんけど」
「父親と母親は、血がつながってなくっても家族だよ。なら、親子も同じさ。養子だってそうだし」
「‥‥‥。」
 黙るハンナと、僕の腰に強く抱きつくツバサ(怪力)。腸が上に参りまーす☆
 いつの間にか、家の中が賑やかになったものです。
 そういえば、僕の家の二階に、部屋が2つほど増えました。
 僕とツバサの部屋(ツバサは1人じゃ寝つきが悪い)、ハンナの部屋(なぜか不満そうだった)、ツボミの部屋(僕の要望)の3つの部屋。さすがにこれ以上増やすと家の造形的に凄まじいことになるので、これが部屋の最大数となります。まぁ、さすがにこれ以上家族が増えるということもないでしょうが。
 僕はバッグを置くために自分の部屋へ戻り、ベッドに腰掛けて窓の外を眺めました。
 そして呟きます。
「なあ、ツボミ。僕が女の子だったら、っていう世界を創れるんなら、僕が存在しなかったら、っていう世界も創れるんじゃないか?」
『ふふ』
 どこかから声が聞こえて見回しましたが、しかし人間の姿も気配も影もありません。
「なんで僕を消さないんだ?」
『いますぐ、単純にキミを消すのかい?』
「あー、ハンナは消さないでくれ」
『んな無茶な』
「できない?」
『できるさ。でも、キミの娘である、悪魔の女だけを消せばいいじゃないか』
「・・・・」
『なのに、自分ごと消させようとする。だからボクはキミを消さないのさ』
「・・・・その子が世界を滅ぼさない世界でもいいけどさ」
『それは無理。あの子にはどんな方向性の攻撃も通じないからね』
「・・・・その子・・・悪魔の女っていう子は、改心させられないのかな?」
『少なくとも、誰にも無理だったね』
「父親の僕でも?」
『もちろん。・・・・・・・・死んでたからね』
 僕は何も言わずに、再び窓の外に目を移しました。
「いつか未来に行く」
 僕のその呟きに、しかし返事はありませんでした。






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