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小説・親子の絆編2



53。



 僕は部屋にたどり着くと同時に、凍りつきました。
 それは、僕の部屋に勝手に侵入している少年がいたからです。
「なにしてんの、ツボミ」
 僕の兄・・・・という設定で我が家に居座っているこの少年は、ツボミ。
 学ランと軍服を足して2で割って原色で染めたような服装の彼は、キザったらしくサラサラのショートヘアをフワッと払い、墨汁で染め上げたかのように真っ黒な髪が金属のように光を反射して揺らぎます。
 彼に関して知っていることは、“無敵”“万能”“性格最悪”ということだけです。
 一昔前のジャニーズ系な甘いマスクを緩やかに歪め、
「なにかするのはこれからだよ」
 と、意味ありげに答えました。
 僕の部屋からは、我が家の庭を見下ろすことができます。おそらく今までのやり取りは彼に見られていたと考えるべきですし、そもそも彼は見えない場所を見ることができ、聞こえない音を聞き取ることができる存在。例え彼が外国にいたって、僕らのやり取りは筒抜けでしょう。
 ツボミは大仰に両手を広げて、
「ねぇ明仁くん。キミに質問だよ」
 僕はそれをなんとなく聞きながら、押入れを開いて昔のオモチャ箱を取り出します。たしかこの辺にコマを入れていた気がするんですが・・・・
「キミは、誠意を見せられなければ誠意を見せてあげないのかい?」
 僕はその意味深なセリフに手を止めて、ツボミを振り返りました。
「どういうこと?」
「そういうことさ」
 僕が食いついたことを確認して、くすりと微笑むツボミ。
「キミは、猫派より犬派なのかな?」
「・・・・まあ」
「そりゃ結構。犬は従順だからね。かわいいもんだよ。猫は構いすぎると嫌われるっていうからね」
 ツボミが言いたいことが分からず、困惑する僕。
「つまりさ、キミは、キミが何もしていないのに好意を抱いて誠意を見せるツバサに必要以上の好意と誠意を見せているけれど、キミに対して先にソレらを見せない人間には、大した興味を見せないよねぇ・・・・ってこと」
 好意と誠意を見せない人間には、興味を見せない・・・・?
「ボクに対しては・・・・まぁ、不信感でしょ?それはいい。それでいい。それがいい。でもさ、たとえば、ハンナちゃんはどうかな?」
 庭を見下ろすように後ろを仰ぎ見るツボミ。
「ハンナちゃんは、どうしてキミに辛く当たってると思う?」
「・・・・それは、未来の僕が、父親としての役目をまっとうしなかったから・・・・」
「その通り。そしてそれ以前に、キミのもう1人の娘は世界を滅ぼし、さらにハンナちゃんの母親を間接的に殺した。その復讐に、14歳の女の子がたった1人でタイムマシンに乗り込み、殺そうとした男が・・・・なんと自分の不実な父親!しかもそれこそ殺してやりたいクソ野郎を、護らなければ自分も死んでしまう!ああ、なんて悲劇だろう!」
 演劇のような大げさな身振り手振りで声を張り上げ、
「キミなら、どう思うよ?」
 責めるような、なじるような視線で僕を貫きます。
 僕は思考が停止しながらも、かろうじて「でも、僕は・・・・」呟きました。
 ツボミは一転して慈母のような穏やかな目に変わり、
「そう。“今のキミ”には罪はない。キミは普通に学校に行って、普通に恋をして、普通に宿題をするような少年だよ。だから、キミには責任はない。しかし責任がないということは権利もない。父親としての責任も無いのに、キミがハンナちゃんの父親だという“知識”、“情報”だけで、キミは無意識か意識的にか、ハンナちゃんを“娘”として扱っている」
 そこで言葉を区切って、再び目を細めながら、
「何も背負わずに、父親面するなよ、小僧」
 その言葉は。
 それは僕にはあまりにも重い・・・・。
「罪を背負わないなら、ハンナちゃんを1人の女の子として扱いなよ」
 言うだけ言って返事も聞かずに、ツボミは僕の隣を素通りして、自分の部屋に戻っていきました。
 残された僕は・・・・。
 僕は。


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