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小説・親子の絆編4

 55。



 ツボミの部屋。
「上手くいったかい?」
「多分ね」
「それは重畳」
 ツボミの部屋は、なんだか良い匂いがしました。しかしそれは香水とかお香とかそういった種類の良い匂いではなく、女の子の部屋みたいな、そういう感じの“良い匂い”でした。
 シールやぬいぐるみなどの子供っぽいものは置いてはいませんでしたが、クッションが多く、今現在もツボミはベッドに積んであるクッションに埋もれていました。部屋の色は基本的に暖色系で、しかし服装とは違って原色ではなく、温かみのある色合いでした。机の上にある教材は宿題でしょうが、彼なら出されたその日に終わらせていることでしょう。ツボミはそういう人間です。
「人の部屋にノック無しなんて、ちょっと考えられないな」
「そんな、女の子じゃあるまいし」
「・・・・・・・・。まぁ、ね」
 なぜか、ほんの少しだけ声に不機嫌そうな色を感じ取ったような気がしましたが、僕にはツボミの考えることなど見当も付きません。
「・・・・それで? なんの用かな?」
「ああ、いや、一緒にどうかなって」
「          なにを?」
 たっぷり間を取って、というかフリーズして、ツボミはクッションの海から首だけ起き上がります。
「いや、だからコマ遊び。ツボミはこういう子供っぽい遊びは嫌いかなって思ったんだけど、まぁ一応誘ってみるかって思って」
 それに、コマなんて物珍しさが先立つことで楽しめる娯楽です。ツボミならコマを知らないなんてこともないでしょうし、面白くはないでしょうから。
「おいおい、親子水入らずってとこに飛び込むほど、ボクは野暮じゃないぜ?」
「・・・・ツボミってさ、結構、自分のことを輪の中から外して考えるよな」
「・・・・・・・・」
「親子水入らず。良い響きだけどさ、僕は家族水入らずっていうのも、それに負けないくらい良いものだと思うよ?」
 ツボミは再び意外そうな表情を浮かべます。
 彼は、自分はなんでもお見通し、みたいなポーズをよく取りますが、しかし時々、見当違いのアテ外れなことを言い出すときがあります。
「・・・・その方が楽しいかと思って誘ったんだけど・・・・、って、ああ、そっか」
 僕に気を遣って、遠まわしに断ったのか。これは恥ずかしい。見当違いもいいところだ。
「ごめん。じゃ、お邪魔したよ」
 僕も別に、コマ遊び自体が楽しいって思ってるわけじゃないもんな。ただでさえ精神年齢が高そうなツボミのこと、付き合ってられないってことでしょう。
 そう考え直して踵を返すと、
「待ちなよ」
 背中に声がかけられました。
「それじゃあ、水入らずに水を差すとしようかな」
 ツボミは一度足を天井に向けて、反動を利用して勢い良く立ち上がりました。
 そして両手には、いつのまにやらベイブレード。
「そっか、じゃ、みんなでゴー・シュートだな!・・・・・・ってオイ!!」
「ナニカナ?」
「なんで伝統芸能に現代文化を持ち込むかな!?」
「それは未来人であるボクらをディスってるのかな?」
「違ぇよ!っていうかプラスチックのベイブレードじゃなくて金属のほうかよ!最新だよ!!」
「《機関銃vs竹やり》みたいな?」
「《ただし対戦闘機は除く》みたいな!!」
 ツボミは含み笑いでベイブレードを片付け、代わりに木製のコマを(空間から)2つ取り出して、
「それじゃ、行こっか」
 と言って僕の前を通り過ぎて行きました。僕は少し考えてから、そんなツボミの背中に声をかけました。
「ツボミ。僕はお前に、“不信感”なんて感じちゃいないよ」
 ツボミはしばらく停止して、振り返りながら「あっそ」と言って微笑みました。
 それは不覚にもドキリとしてしまうほど、魅力的な微笑みでした。



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