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小説・vs銀字・1


57。



「ねーねーアキりん」
「なんだいみっちゃん」
 昼休み。僕が「トイレに行こう」と思って席を立ち、教室を後にし、廊下を進み、トイレの扉を開くと、そこには美智子ちゃん‥‥僕に言わせれば、みっちゃんが窓に背を預けて立っていました。「なんで男子トイレにいるの?」「アキりんが女子トイレに入る可能性は低いと思って」「賢明な判断だね」
 僕の座右の銘は〈声無くして人を呼ぶ〉です。
「つまり僕に会いたかったってこと?」
「聞きたいことがあってね」
「へぇ」
 なんでしょう?「宗教に興味ない?」とか「神様って信じる?」とかだったら、僕の中の友達リストから削除することを検討しなきゃなりません。
「神様って信じる?宗教に興味ない?」
「僕は“モッタイナイ神”っていう神様を信仰してるよ。だから幼稚園の時から、出されたご飯はどんなに不味くても、残したことはないのさ」
「そうなんだ。あたしの宗派では、辛味と苦味と渋みは不浄だから食べちゃいけないんだ」
「改宗するよ」
「冗談はさておき」
 なんだ冗談だったのか。
「べつに切羽詰まったお話じゃないんだよ。どちらかと言えば日常会話寄りってかんじ」
「‥‥‥へぇ」
 思いあたりませんね。
 僕が読みあぐねて困惑していると、みっちゃんは「そういえば言ってなかったけど、あたし女の子なんだよね」と大仰な風に言って、個室トイレに入っていきました。僕はなにも言わずにそれに従って、同じ個室に入って鍵を閉めました。‥‥以外と狭い。洋式便器の蓋を下ろして、僕とみっちゃんは背中合わせに座りました。
「で、なに?」
「うん。アキりんのことを知りたいと思ったんだ」
「9月31日生まれ、AB型、右利き、握力34、視力1、1」
「ニシムクサムライって知ってる?」
「‥‥」
「3つの事件について、聞きたいな」
「僕の人生における三大事件の第三位は、小学校低学年の時、僕が工作の授業で頑張って作った紙粘土細工の白鳥をお婆ちゃんの誕生日にプレゼントしたら、お婆ちゃんがゴキブリだと思って叩き潰したことかな」
「わざとだったんじゃないかな?」
「どうかな。白鳥なのに黒く塗ったのがいけなかったのかもね」
「小学生の時分で、人間の身勝手を表現したんだね」
「前日のドキュメンタリーで、油で汚れた白鳥なんて見なければよかったよ」
「冗談はさておき」
 3つの事件。
 ガキ大将・剛。
 支配者・銀字。
 ターミネーター・四谷。
「男女が互いの過去を掘り下げると、ロクな事ないんじゃない?みっちゃんだって、知られたくないことはあるでしょ?」
「その3つは知られたくないことじゃないでしょ?」
「‥‥‥まぁ、ね」
「それにあたしは、アキりんになら、知られたくないことなんて無いよ?アキりんが言いたくないことを敢えて言わせるつもりはないけど」
 相も変わらず、気持ち悪いくらい思考回路が似ています。
 それは、ズルいんじゃないかな?
「わかったわかった、オッケーオッケー。じゃあ、3つのうち、1つだけ教えてあげるよ」
「じゃあ、銀字さん」
「ふーん、なんで?」
「一番接触したくないから」
「賢明な判断だね」
 僕はやれやれ、と肩をすくめて、あの歩く独裁政権についての記憶を辿ることにしました。


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