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小説・vs銀字・4



60。



 3組の教室に踏み込んだ、僕と剛。
 僕の感想はと言うと、なんというか、世紀末って感じでした。
 肩パッドや火炎放射器、モヒカンなどは見当たりませんが、それでも血に飢えた目や荒んだ雰囲気、どこをとっても世紀末。右を見ても左を見ても、頭のてっぺんからつま先まで、男女問わずに世紀末。
「・・・・終わってんな」
 剛がこう呟くのも、無理ありません。僕も同時に心の中でそんな感想を抱いていたためです。
 今まで3組を見たことが無いわけではありませんし、関わりが無かったわけでもありません。しかしこうやって向き合ってみて初めて感じることもあるものです。
 そして僕らの登場に、3組の連中・・・・主に男子が騒ぎ始めました。しかしそんなことにはまったく構わず、剛は良く通る声を響かせました。
「銀字とかいうヤツ、出てこい!話がある!」
 銀字、という名前に戦慄する3組生徒。やはり噂は本当だったのか。
 しかし本当に銀字とかいうヤツがリーダーだったのだとして、その居場所を教えるような人物はいないだろう。
 それどころか、すでに取り返しの付かないレベルまでヒートアップしている男子がちらほらと見受けられます。
「聞きてぇことがあんなら、聞き出してみせろ!!」
 そんな怒号を響かせたのは、群を抜いて図体のでかい男子。制服がパッツンパッツンですが、特注の制服を作ってもらうほど裕福ではない家庭なのでしょうか。
 危機的状況において、僕がそれでも相手の家庭の事情を考えるだけの余裕がある理由は、単純明快。
 熊のようなシルエットがこちらに突貫してくるのを、剛は哀れむように目を細め・・・・
「おおおおおおおおおお!!!!」
 吼えた。
 次の瞬間、なにがどうなったのか分からない軌道で剛の攻撃がデカブツに叩き込まれ、3メートル、地面と接触せずに吹っ飛ばされていきました。
 呆然とする教室。次の瞬間、騒然とする教室。
 呆けて然り。騒いで然り。
 それだけありえない状況、ありえない光景。
 おそらくさっきのデカイ男は、このクラスの中でも実力者だったのでしょう。それに続いてこちらに挑んで来る輩はいないようです。
 剛が暴力担当なら、僕は暴言担当と行きましょう。
 理性的で穏やかな暴言を。
「別に、銀字さんと闘おうってわけじゃないよ。僕らは、謝りに行くんだ。状況が乱れていて、銀字さんにも把握できていないのかもしれないし、事情を説明して、負の連鎖を絶とうとしているのさ。暴力の応酬なんて、すばらしい学校生活を送る上で、邪魔にしかならないからね」
 少なくとも、僕はそう考えています。
 剛はどう考えているか、知りませんが、ね。
「だから、銀字さんと話がしたいのさ。どうやら教室にはソレっぽい人はいないみたいだね。昼休みはいつも、どこに行っちゃうのかな?誰か、知らない?」
「・・・・テメェは、なんなんだよ」
 ここで、勇者である剛に引っ付いてきた腰巾着っぽい僕の存在が許せないのか、教室内の男子の1人が僕に矛先を向けました。いや、それ以前に昨日抗争に参加していた連中は、忘れようのないまでに僕の顔を覚えていることでしょう。そういえば、昨日のボスっぽい男が見当たりませんが。
「だから教えねぇっつってんだろ!」
 叫び、こちらに突っ込んでくる男子生徒。良く見るとコイツ、モヒカンです。世紀末です。
 剛をチラリと見ますが、すでに教室の壁に寄りかかって我関せずといった物腰。助けてはくれないようです。もしかしたら、さっきの僕の言い分が気に食わなかったのかもしれません。
 僕はため息をつきます。
 暴力は、嫌いなんだけどな。
 繰り出される右ストレートを、僕は体ごとかわします。続けてモヒカンは体当たりの要領で僕の懐にもぐりこみ、そのまま押し倒そうとしている模様。
 野郎に押し倒される趣味はありませんし、こんなチョイ役に時間を浪費するのも面倒です。
 僕はもう一度体ごと体当たりをかわし、踏み出している足を払ってバランスを崩させて、後頭部を掴んで、
「おい、明仁」
 剛が制止しようとしましたが、構わずに掴んだ頭を近くにあった机に叩きつけました。
 ヅガン!!という乾いた音が響き、動かなくなるモヒカン。
 しかしそんなものには目もくれず、僕は気を取り直して3組の人々に顔を向けます。
「僕らは話し合いに来たんだ。平和に行こう!」
 僕のその言葉に、なぜか青ざめる一同。あれ、なんかおかしなこと言ったかな?正論だったと思ったんだけど。
 全員が黙っていると、急に教室の後ろの方から笑い声が響きました。堪えていたが、たまらずに噴き出してしまった、といった様子でした。
 この大物な雰囲気・・・・。
 まさか。
「いやぁ、あんた、面白いな!そっちのイケメンも面白いけど、特にあんたが面白い!!」
 人ごみを掻き分けて現れたのは、長身でそこそこ顔の整った、メガネの似合う少年でした。
 しかし、なにか違和感。
 この世紀末な雰囲気の中で、あまりに“普通すぎる”のです。
「・・・・お前が、銀字か?」
 警戒しながら剛が尋ねると、それにも高らかに爆笑するメガネの少年。
「違う違う、俺の名前は、二宮だよ。銀字ちゃんは髪の毛銀色だから、それですぐにわかるぜ?とにかく、話し合いなら俺が応じるよ。そっちの・・・・強いイケメンは知らないけど、弱い方のあんたは、なんというか、俺以外の3組生じゃあ良いように言いくるめられそうだ」
 確かに、彼は、二宮は、そう簡単に言い負かせそうな雰囲気ではありません。
「じゃ、行こうぜ。ここじゃあ話しにくいしな。もうすぐ授業だけど、面倒だからついでにすっぽかしちまおうぜ!」
 彼は僕と剛の間をすり抜け、上階へ向かう階段に足をかけました。
「さ、ついてきてくれよ。話し合おうぜ。・・・・平和的に、な」




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