スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小説・vs銀字・6



62。



 迎井銀字と聞いて、僕はてっきり、たくましい男を想像していました。
 では実際はどうだったのかというと、まず性別から違っていた模様。
 髪は銀。長く伸ばした髪を乱雑に切ったような髪型で、目つきはナイフのような鋭さ。瞳は炯々と光り、野獣を彷彿とさせるような凶暴さ。
 身長は、さきほど剛がぶっ飛ばした大柄な男よりもさらに大きく、180は越えていようかというレベル。整った顔とスタイルとあいまって、モデルのような印象を受けました。制服のスカートは長く、スケバンを連想する者も少なくはないでしょう。
 一言で言えば、カッコイイ女の人。
「や、銀字ちゃん」と、気安く声をかけるのは二宮。
 以前から“ちゃん”付けには違和感を抱いてはいたのです。まさか女性だとは。しかしあの外見にちゃん付けはどっちみち似合いませんが。
「二宮。なんのつもりだ」
 空気を突き刺すような声。殺雨先生を思い出させるような、独裁者の声色。いえ、3組の頭領というなら、独裁者ではなく世紀末覇者でしょうか。
「あんたが銀字か」
 剛が一歩前に踏み出し、銀字と向かい合います。
「単刀直入に言う。あんたのクラスのヤツらに、手を引くように言ってほしい」
 本当に単刀直入です。
 そして臆さない!圧倒的な存在が目の前にいて、それでも普段と全く変わらない態度。流石です、ガキ大将。
 しかし相手、銀字も顔色一つ変えやしません。
 僕は思いきって先制する事にしました。
「あの、最初に手を(足だけど)を出したのは僕なんです。それは、すみません」
 僕の言葉にも、やはり反応がありませんでした。
 銀字は少し空に視線を移してから、僕らに視線を戻して、
「オレは知らん」
 とだけ言いました。
 爆笑する二宮。
「いや、知らんじゃなくってさ、あんた、3組のリーダーなんだろ?だから‥‥」
「リーダーってなんだ?学級委員か?なら違うね。オレは掲示委員だ。今日も保健便りを画鋲で貼っ付けたよ。学級委員は、昨日鼻を折って休んじまってるらしいがね」
 ‥‥‥あの男、学級委員だったのか。意外だ。
「ふざけるな。それとも、今回のことはあんたの指示だってのか?」
「だとしたらどうする?」
「‥‥そっちの方が、手っ取り早いかもな」
 瞬間、空気がピリッと張りつめたような錯覚。
 二宮がわくわくしているのを横目で見ながらも、僕は緊張を高めます。
「面白いやつもいたもんだな。オレに挑むって?はは。昨日校庭で“遊んでる”のを見たけど、あれじゃ話になんねーってのが大前提だけど?」
「あんたは、あの程度のヤツらに本気出すのか?それこそ話になんねーよ」
 加速度的に質量を増していく空気。僕は思わず2人から距離を置きながら、諫めることにしました。
「おい、剛。僕らはケンカしにきたわけじゃないだろっ?」
「コイツを負かせば、平和的に解決するだろ」
「結局負かすんだったら、3組のヤツらでも同じだろ!」
「‥‥あん?・・・・・・‥は。・・・・ま、そりゃそうか」
 殺気を収めた剛は、銀字から2歩距離をとって、
「だけどさ、べつにあんただって、2組と3組が争ってたって得するわけじゃないだろ」
「得?はっ、得か!じゃあ逆に、そんな面倒なことをして、オレは何の得をするんだ?」
「‥‥‥」
 どちらにせよ、得はない。
「損といえば、今お前らと無駄な議論をする体力の方が損だな。お前らの面倒にオレを巻き込むな。オレはお前らのママでもなければ担任教師でもない。わかったらさっさと失せろ」
 言うや否や、銀字は屋上の地べたに寝っ転がって目を閉じてしまいました。
 剛はしばらくそれを見ていましたが、やがて、
「行くぞ、明仁。コイツ、話にならん」
 ‥‥まぁ、確かに話にはなりませんでした。銀字の言い分ももっともですが、それを実際に口に出していいのは小学校低学年まででしょう。この子、社会に出たときとんでもなく苦労しそうですね。
「ま、そうだね」
 くぐってきた扉に向かう剛の背中に続きながら、
「3組の奴らとは、友達って感じじゃなさそうだし・・・・無理に関わらせるのも可哀想だね」
 瞬間。
 なにかが、動いた気がしました。
 気配?空気?いやいや、そんなものではありません。
 それはあまりに純粋な・・・・、
 殺気。
 僕が振り向いたとき、すでに銀字は僕と数センチ程の距離に接近していました。
 ほんの数瞬前まで5メートル先で寝転んでいたはずなのに。
 剛も、さすがに動けずにいました。
 やばい。やばい。やばいやばいやばい。なにかを、“踏んだ”。
 地雷だ。これは間違いなく、やってしまった。
 なんだ?なにが気に障った?
 もしかして、“可哀想”・・・・か?
「あ、あの・・・・」
「二度とオレの視界に入るな」
 ピシャリとそう告げて、銀字は僕の脇を抜けて、剛の前を通り過ぎ、二宮に一瞥もくれずに、屋上を後にしました。
 そして。
 僕らがその足で3組に向かう頃には、すでに銀字によって何かを言われたらしい3組生が、なんと僕らに終戦を言って寄越したのです。
 驚くには驚きましたが、しかし好都合ではあるので、僕と剛はそれを安易に受け入れて、安心してしまったのです。
 そんな都合の良いことがあるはずもないのに・・・・。




スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

サバイバルナイフのいろいろ

サバイバルナイフ関する情報。サバイバルナイフの入手法やサバイバルナイフと他のナイフとの違いなどを、初心者にも分かりやすく説明しています。   
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。