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小説・vs銀字・7



63。



 しばらくは何事もない、平穏安穏な学校生活が続きました。
 最初の抗争から1週間。雨天。
 殺雨先生の社会の授業が開始したとき、前の音楽の授業までいたはずの理沙子ちゃんと、彼女の親友の生田さんの姿がありませんでした。
 鷹の如き眼光を光らせた殺雨先生は教室中に視線を照射しながら、
「谷原と生田はどうした」
 と静かな声を発しました。
 これはおかしいです。生田さんはわかりませんが、少なくとも理沙子ちゃんが、よりにもよって殺雨先生の授業をすっぽかすなんて・・・・。
 もしかして、音楽室からの帰り道でなにかあったのでしょうか。そう、たとえば、階段から落っこちたりして・・・・!?
 僕がそんな懸念をしていると、教室後方(僕の席は教室のド真ん中)から囁き声が聞こえてきました。
「そこの話している女子。江西、葉桜、岩倉。なにか知っているのなら大きな声で話せ」
 先生に指摘された3人は、迷っているような困っているような表情をしていましたが、やがて観念したように・・・・そしてなぜか一瞬僕を見て、
「音楽室から・・・・帰ってるときに、理っちゃん・・・・谷原さんと生田さんが、3組の男子に声をかけられて・・・・」
 江西さんの言葉はそこで途切れ、葉桜さんが引き継ぎます。
「それで、「先に行ってて」って言われたから、わたしたちは先に教室に・・・・。でも、帰ってこなくって・・・・」
 僕は、久しぶりの感覚に捕らわれました。
 天慈くん・・・・。
 彼がいなくなったことを知ったその日、たくさんの耳鳴りが聞こえました。そして視界がどんどん白く濁っていくのです。皮膚感覚は鋭くなるのに、痛みは感じなくなるような、そんな感覚。
「明仁!!」
 剛が何か言ったような気がしましたが、聞こえません。耳鳴りはうるさいから、何も聞こえませんし、視界が白いのでなにも見えません。
 僕は教室を飛び出して、3組を一瞬覗いてから、音楽室への道を進みます。雨の日なので、3階の渡り廊下は閉鎖されています。自然、一旦2階に降りた後、渡り廊下を渡り、階段で3階に昇らなければいけません。・・・・結構遠い。これでは、どこで理沙子ちゃんが声をかけられたのかによって、かなり捜索範囲を広げなければなりません。
「理沙子ちゃん!!」
 とりあえず叫んでみますが、返事はありません。聞こえない場所にいるのか、それとも聞こえていても返事ができないような場所にいるのか。
 いや、落ち着け。通路の真ん中で2人の人間を拘束するなんて馬鹿はいないし、人がいる教室に入れるわけもない。外に行く意味もない。というより、どうして理沙子ちゃんはさらわれた?
 渡り廊下を渡りきると、家庭科室を覗きます。いない。じゃあ調理室か?美術室?音楽準備室?
「理沙子ちゃん!!!」
 もう一度叫んでみます。が、返事はない。
 後ろから足音がするので振り返ると、剛と、さっきの3人組の1人、岩倉さん(前髪は短め、後ろは長めの三つ編み、空手部実力者)が追ってきていました。
「明仁!ちょっとは落ち着け!谷原を発見してからでも、“その状態”は遅くねぇだろ!」
 僕の今の状態を一番間近で見ていた剛が、警戒しつつ僕と距離を詰めます。
「邪魔するなら、剛、お前だって・・・・」
「高橋君、落ち着いて。邪魔じゃないさ」
 岩倉さんが両手を少し浮かせて、僕の攻撃に備えるように構えて距離を縮めます。
「あたしは、案内さ。理沙子ちゃんが声をかけられてたのは、そこの階段を昇ったすぐソコ。音楽室から出てすぐだよ」
「・・・・・・・・ありがと」
 少し頭から血が引いて、冷静になりました。しかし、剛と岩倉さんのこのコンビは、僕のことを取り押さえる気満々だと思うのは邪推でしょうか?
 僕ら3人で3階へ続く階段を昇りきると、そこにある教室は音楽室1と音楽室2、音楽準備室にコンピューター室の4つ。
 音楽室1は使用中だったので、まず音楽室2を覗いて、それから音楽準備室(鍵がかかっている)を覗いて、最後にコンピューター室へ向かいました。
「ん?・・・・鍵がかかってる」と、岩倉さん。
「じゃあ、ここでもないか」と、剛。
「・・・・・・・・」
 いや、
「さっき別のクラスがここを使ってたよ。鍵がかかってるのはおかしい」
 しかしコンピューター室の扉の小窓にはブラインドが下りているので、中が見えません。
 少し考えて、僕は扉を蹴飛ばすことにしました。
 ドガァン!!
 剛と岩倉さんが騒ぐのを片手で制して、僕は扉に耳を付けます。
 すると、
(おい、誰か外にいるぞ!?)
(この時間は授業ないんじゃなかったのかよ!?)
(でも先生なら鍵持ってるだろ?)
(じゃあ他の生徒か・・・・)
(大丈夫だ、入れやしねーよ)
 中に人がいることは確かなようです。
「・・・・どうするか」
 鍵を持ってこようか検討する僕と、扉の鍵の仕組みを確認する岩倉さん。下の小さな通気扉の施錠具合を確認する剛。
「駄目だな、全部しまってる。上の窓も」
「・・・・じゃあ、鍵を取ってこないとな」
 僕が職員室へ向かおうとすると、
「いや、これならイケるさ」
 岩倉さんは、2枚のスライド式扉のうち、手前の扉を引っ張り、奥の扉を左足で押し、そのまま無理矢理扉をスライドさせました。
 剛も引くくらいの、まごうことなき純粋な力技。
 扉がガリガリ削れるような音を響かせながら、扉が人1人分、開かれました。
「ね? 余裕さ」
「・・・・とんでもねーな」
「とにかく、行こう」
 僕ら3人は、コンピューター室に足を踏み入れました。
 この時、前にいるのにわざわざ最後に教室に入った岩倉さんの行動の意図は、冷静を欠いていた僕は気が付きませんでした。



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