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小説・vs銀字・8



64。


 教室に入るとすぐに、4人の男と、そしてその足元に2人の女子を発見しました。
 2人は手ぬぐいかなにかを口元に巻かれていて、ここからでは見えませんが、両手も拘束されているようでした。
 なぜ理沙子ちゃんが、こんな、こんな目に遭わなければならないのか・・・・!!!
「――― くぅ  ァァアアアア!!!」
 僕は再び頭に血が上り、2人を人質として使おうとしたのか、何かを言いかけた3組生に向けて飛び掛ろうと踏み込み、
「ふッ!」
 岩倉さんに襟を掴まれて、頭から床にたたきつけられました。いくらコンピューター室の床がカーペットでも、この仕打ちは人としてどうなのでしょうか。
 “この程度で”止まらないことを知っている剛は、飛び起きようとした僕に関節技を決め、再び床に捻じ伏せました。岩倉さんは、まだ平気で動こうとする僕に驚いているようでした。
 そしてさらに驚いているのが、少し離れたところにいる6人。不良4人と人質2人。
「お、おい。動くなよ」
「そうだぞ、お前ら、自分の立場がわかってるのか!?」
「人質がどうなってもいいのか!?」
 言ってることはイッチョ前でも、腰が引けてしまっています。
 僕は少しだけ冷静さを取り戻したため(つまり痛覚も戻ってきているのですが)、4人を思いっきり睨みつけ、叫びます。
「お前らこそ、立場がわかってるんだろうな・・・・!動いたら人質がどうなってもいいのか? はぁ!? どうなるっていうんだよ。殺すってのか?中学生の分際で分不相応な戯言抜かしてんじゃねぇよ!・・・・指一本触れてみろっ!お前ら全員人前に出られない顔面に変えてやるぞッ!!」
 こういうセリフを理沙子ちゃんの前で言うなら、顔を床に押し付けられている体勢は遠慮したかったです。
 4人組はすっかり戦意を喪失しているようで(そりゃそうです。容赦なく仲間の頭を床にたたきつける女と、仲間の関節を極めて捻じ伏せる男と、仲間に押さえつけられまくる男・・・・)、人質の2人からも距離をとって、どんどん後ろに下がっていっていました。
 剛は僕の拘束を解いて、
「あの2人を頼んだ」
 と4人組の元に向かいました。
 剛の信頼に応える意味で、渋々理沙子ちゃんと生田さんの方を担当することにしました。
「大丈夫!?理沙子ちゃん、生田さん!」
 口に巻かれた手ぬぐいを取り去り、後ろ手に拘束された手首の具合を確認しました。どうやら4人のうちの誰かのYシャツの腕の部分で縛っていたようで、これなら手首に痕が残るようなこともなさそうでした。そんなことになっていたら、僕はどうしたか分かりません。
「あ、ありがと・・・・アキくん」
「・・・・ありがとう」
 2人はまだ怯えているような様子でした。安心してくれても良いのにな・・・・と考えたところで、ハッとしました。まさか今の僕の取り乱しようを見て、ドン引きしてしまったんじゃ・・・・。まさか、そんな・・・・どうしてこうも、裏目裏目に・・・・
 剛の方を見ると、すでに4人の男子は土下座に突入していました。
 僕は陰鬱な気分でそちらに近づいていき、
「聞くまでもないけど、聞いておこうか。誰の指図なんだい?」
「・・・・ぎ、銀字さんです・・・・」
 気が遠くなりそうでした。
 あの無気力自堕落女、澄ました様でいて、根に持つヤツだったのか。
「・・・・それで、なんで理沙子ちゃんと生田さんだったの?」
「銀字さんが、あの時の抗争での立ち回りから考えて、アンタが誰かを守っていたようにしか見えないって言い出して・・・・それで、多分、そこの2人のうちのどっちかだろうって・・・・」
 なら、ピンポイントで僕が狙われたわけか。そして、敵の狙いはかなり正しい。正確ではあるけど、性格はひねくれきっているとしか思えません。
「明仁。こいつら、どうしようか?」
 剛の言葉に、僕は考え込んでしまいます。本当なら「体をゆでたまごスライサーみたいに分割して絵画用額縁にそれぞれ収めて着払いで送品」くらいのことはしてやりたい気分だったのですが、それでは再び憎しみの連鎖に陥るだけ。かといって何もしないで見逃せば、付け上がる可能性もなくはない。
 痛めすぎてはいけないし、痛めなさすぎてもいけない。
 これは難しいところです。
「・・・・うーん。難しいね。岩倉さん、なにか、案はある?」
 僕は時間稼ぎに、傍らで机に腰を落ち着けていた岩倉さんにパスと出します。4人組は、閻魔様の前に引きずり出された死刑囚みたいな面持ちで彼女に視線を移します。
 岩倉さんは考えて、
「4人全員、今日の放課後から空手部に入れ」
「「「「・・・・へ?」」」」
 見事なハーモニーのハモりでした。空手部ではなく合唱部を推したいところです。
「じゃあ、殺雨先生が怒らないうちに、戻ろっか」
 岩倉さんはあっさりと切り上げ、理沙子ちゃんや生田さんを気遣いながら肩を貸します。剛は何も言わずに、目を伏せてそれに続きました。僕は呆気に取られながらも、4人をちらりと一瞥しただけで、何も言わずに出口へ向かいました。
 岩倉さんは教室を出る直前に一言。
「もし今日、体育館の柔道部部室に1人でも来ないやつがいたら、サンドバックに詰めるから、そのつもりで」
 と言い残しました。遠まわしな死刑宣告。
 僕ら5人は殺雨先生の待つ教室へ無事戻り、理沙子ちゃんと生田さんは体調を聞かれ、剛と岩倉さんは軽く褒められ、僕は廊下に立たされました。
「理不尽だ・・・・・・・・!!」




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