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小説・vs銀字・final



57。



 体育館裏。
「ノコノコ付いてきたってことは、あんたも乗り気なんだろ~?」
 下品な笑みを浮かべながら、3人の男子が1人の女の子を取り囲んでいました。
「・・・・ふん」
 彼女はハンナ。未来人にして暗殺者。そんな彼女は学校に行くだけでも光線銃を持ってきていて、丸腰の相手なら何人相手だろうが楽勝のはず。
「なにかと思えば、いわゆるナンパとかいうやつでしょうか」
「まぁそんなことだけどよ」
「私に敵うとでも思っているのですか?」
 この状況で余裕をかませる女の子に、言い知れぬ緊張が走る男子たち。2組には空手部主将と、合気道中学生の部優勝の女の子がいますので、目の前のなんの変哲もない女の子が異様な戦闘能力を有しているというのもありえないとまでは言い切れません。
「謝るのなら、今のうちですよ。私は今からアキヒトに会いに行かなくてはならないんですから」
「・・・・はん、アイツか。なに?もしかして付き合っちゃってんの?」
「いえ。家族みたいなものですから」
 一瞬呆気に取られる男子たち。その言葉が、「親しすぎて家族にしか思えないほどラブラブ」なのか「親戚なので異性とは見れない」という意味なのか、判じかねたためです。
「まぁ、いいや」
 3人のうち、正面にいた男子がハンナに手を伸ばしました。ハンナは服の内側から光線銃を取り出して男子に向けようとしましたが、右側にいた男に腕を掴まれてしまいました。なまじハンナのことを実力者かもしれないと警戒していただけに反応が間に合ってしまったのです。
「あ・・・・!」
 そして握力自体は普通の女の子のハンナ。あっけなく光線銃“へんかんくん”を奪われてしまいました。
「ん?なんだこれ。オモチャじゃねーか」
 面白がってそれをハンナに向ける男子。じつはオモチャなんかではなく、引き金を引けば光線を照射して、命中した対象をアリさんのオヤツに変換してしまうという兵器であることを知るハンナは、真剣に怯えてしまいます。
 しかし、虚勢を見破られたせいでおとなしくなったと勘違いした男子は付け上がり、震えるハンナを壁に押さえつけました。
「ほらほら、この銃で俺らを撃つつもりだったのかー?」
「ひっ」
「ぎゃはは!なんだこりゃ!怯えちゃってるよ!」
 銃をハンナに向け、
「ほら、撃っちゃうぜー、3、2、1、」
「ばーん」
 僕のドロップキックが、銃を持っていた男子の頭に突き刺さりました。
 持っていた光線銃は宙を舞って、ハンナの手元に戻りました。
「アキヒト!!」
「おいっすハンナ。知らない人には付いて行っちゃいけないって、教えてなかったな!」
 ギリギリセーフ。ツボミを先に探してハンナの居場所を聞かなければ、間に合わなかったかもしれません。
「なんだテメェは!!」
「たった今、『アキヒト!!』って言ってただろ、バカか」
 言いながらソイツの頭を掴んで、奥の体育館の壁に叩き付けました。
 あっという間に2人が動かなくなり、あと1人に目をやりました。
「あ、アンタが魔王かよ・・・・!」
「そう呼ばれてるってだけだよ。そういうキミは、もしかして1年生かな?」
「だったらどうしたってんだよ!」
「いやいや、1年生ってのは別にどうでもいいよ。2年3組じゃないってことが重要だったんだから」
「・・・・?」
「じゃ、行こっか」
 僕はハンナの手を取って、教室の方向へ足を向けました。
「い、いいんですか?放っておいて・・・・」
「いいんだよ。2回目は徹底的にやるけどね。それよりハンナ、自分の力に自信があっても、わざわざ面倒ごとに首を突っ込むのはやめな」
「・・・・でも、」
「でもじゃない」
「・・・・・・・・はい」
「心配したじゃない」
「・・・・は、はい」
 ハンナ・・・・顔が赤いのですが、体調は大丈夫でしょうか。
 今回はどうにか間に合いましたが、それでもかなり危ないところでした。娘1人の安全も確保できないなんて、そんなのは、父親失格でしょう。
「・・・・ダメだな、僕」
「え?」
「昔から、こうだもんな・・・・こんなんで父親とか、笑っちゃうよね・・・・。ごめんね」
 繋いでた手を離して、少しだけ距離を取りました。
「あの・・・・」
「1人じゃなにもできやしない」
 もうすぐ昼休みも終わるころでしょう。嫌な思い出を掘り返してしまいましたが、今と昔で何も変わっていないというのが一番の苦悩です。
「校庭のみんなも帰りはじめてる頃だし、教室に戻ろうか」
 僕が1歩前を進もうと足を踏み出すと、僕の左手が引かれました。
「・・・・ハンナ?」
「わ、私も1人じゃ何もできないです」
「そんなこと・・・・」
「いいえ。なので一緒に力を合わせるんです!」
「・・・・」
「だからアナタは、ダメじゃないです!卑屈なことを言うのはやめてください。聞いてて気持ちの良いものではありません」
「・・・・ありがと」
 昼休み終了のチャイムが鳴り響き、下駄箱へ向かう生徒が増えていくにつれて、手を握るハンナと僕に集まる視線も増えるのですが、彼女の手は力強く、容易に振りほどくことはできそうにもありません。・・・・振りほどけたとしてもやりませんが。
「ハンナ。ハンナは・・・・ほんとに、いい娘だね。親孝行者っていうかさ」
 握られているのと逆の手で、ハンナの頭を撫でてみました。やはり、それを嫌がる素振りはありませんでした。
 そうです、なにも1人でなんでもやることはないのです。銀字ではあるまいし、僕には友達や“家族”がいるのですから。
 いつも、僕が失敗した時、僕の隣には誰もいませんでした。1人で、敵と向かい合っていました。
「僕は、1人じゃな・・・・・・・・・・・・い・・・・」
 僕の、隣に。
 僕の左手を握るハンナとハンナの頭を撫でる僕の、隣に。
 理沙子ちゃん、が。
「・・・・おはよう、アキくん」
「・・・・・・・・・・・・おはよう」
 理沙子ちゃんは僕の横をすり抜けて、下駄箱へ向かっていきました。
 ・・・・・・・・おはやくないぜ、理沙子ちゃん・・・・。
 急に1人にされたような寂寥感を全身で感じながら、僕はハンナと一緒に下駄箱へと消えていきました。
「なんて・・・・・・・・理不尽」



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