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第四話


「月の下の殺人鬼」【目次】に飛ぶ



「・・・おはよ、お姉ちゃん」
「え? 日和、まだ早くない? まだ6時にもなってないよ?」
「ううん、なにか、手伝おうと思って・・・」

 言いながらも、日和は眠そうに目を擦っているところだった。
 名前に反して、日和は朝に弱く、月乃は徹夜が出来ないのだ。
 なるべく起こさないように静かにベッドを抜けたのだが、もしかしたら起こしてしまったのかもしれない。

「じゃあ、あたしがお弁当作ってる間に自分の分のサンドイッチを作ってくれるかな? その前に、顔洗ってきなさい」
「ふあーい」

 気の抜けた返事を残して、おぼつかない足取りで廊下へ消えていく日和。

 月乃は昨日のことを思い出す。
 彼氏ができて、裏切られて、殺人鬼に救われて、そして、日和と和解した。

 もう”死人”はやめたし、”仮面”も外した。

 これからは、榊 月乃として、胸を張って生きていくと決めたのだ。

 灰色の人生に彩りを取り戻すと、決めたのだ。


● ● ●


「おはようっ!」
「え、あ、おはよう」

 教室に入ると同時に先手必勝。元気な挨拶をかましてやる月乃。
 普段と違う雰囲気の彼女に、クラスメイトもややたじろいでいる。

 そして、今日は自分の席にカバンを投げ、美沙の席に直行する。

「小林さん、おはよう」
「お? おはよう、月乃ちゃん」

 なにやら真剣モードの月乃に、怪訝な表情を向ける美沙。
 構わず月乃は、登校途中に考えていた台詞を口にしようと試みる。
 怖い。
 しかし。

「こ、小林さん・・・・・・あのね、ドン引きするかもしれないんだけど・・・・・・」
「う、うん。なに?」
「じつは、じつはね・・・あたし・・・・・・オタクなんだ」
「・・・・・・・・・へ?」
「この前、漫研の人が殺人鬼を漫画のキャラみたいって言ってたらしいけど、そのキャラも知ってたし、小林さんが妹さんの話をするときに出てくるワードも、じつは知ってるものばっかりなんだ・・・!」

 美沙は呆然と、ただ頷くだけだった。

「こ、小林さんはオタクが嫌いだっていうから、隠してたんだけど・・・騙しててごめんなさいっ!」
「え、あ、うん、それはいいんだけど・・・なんで急に?」
「昨日いろいろあって、変わろうって決心したんだ。今までのあたしは、もう卒業しなきゃいけないと思ったの。思ったことも言わずに、笑ってるだけっていうのは、もうやめる。もう嘘も、やめようって」
「・・・・・・」
「こんなこと急に言っちゃってごめんね。なに言ってるのか意味わかんないよね。でも、あ、あたしは、小林さんのこと、たった1人の、友達・・・・・・だと、思ってるから・・・その・・・」

 勢いだけで乗り切ろうとしたが、スピード不足だったようで、次第に顔が赤くなって声が小さくなっていく月乃。
 まともに美沙の顔を見ることが出来ずにうつむいてしまうが、わざわざ美沙はその顔を覗き込んで、微笑んだ。

「私は、月乃ちゃんのこと、親友だと思ってるよ? だから、そんなに遠慮されると地味に傷つくってゆーか・・・・・・・・・え、ちょっと月乃ちゃん!? なんで泣くの!?」
「ご、ごめ・・・親友って・・・う、うれしくて・・・」
「だー! もう可愛いなちくしょー!」

 がばー! と飛びかかった美沙は月乃に抱きつき、乱暴に振り回す。

「もー、なんにも知らずにオタクきもいとか言ってたじゃんか私ぃ! うっせーお前がキモイんだよ、とか言ってやってよね!」
「ええっ、そんなこと・・・」
「月乃ちゃんがどんくらいオタクってるのか、これはお宅に伺って検証してみる必要がありそうだね!」
「え!? う、うん、いいけど・・・」
「そしたら次に、うちにも来なよ。うちの妹の生粋のオタクっぷりを見せたげるから!」
「いいの・・・?」
「いいよいいよ、じゃんじゃん来なよ!」

 月乃を開放して、自分の机に腰を下ろす美沙。

 そして月乃には、もう一つ、登校中に考えていたことがあった。
 まだ涙がにじむ瞳を上目遣いにして、赤面しつつ、それを口にしてみる。

「ねぇ、小林さん・・・・・・”美沙ちゃん”って呼んでも、いいかな・・・?」
「ぐはっ!!」
「え!?」
「や、やるじゃねーか! もちろんだよ! 呼ぶがいいよ!」
「あ、ありがとうっ!」

 少し勇気を出して足を踏み出してみれば、これである。
 もちろんこんなものは序の口であるが、しかし彼女にしてみれば大きな意義のある一歩だった。

「あ、そういえば酒井くんとはどうなったの?」
「昨日破局した。あとで正式に別れてくる」
「早っ!! なんで!?」
「恋愛の方向性の違い・・・・・・かな」
「そんな売れないバンドみたいな・・・・・・」

 だからその日のお昼は、月乃と美沙、そして美沙の友達の吹奏楽部の人と、数人で食べることになった。
 そこでも月乃は、それなりの手ごたえを得ることが出来た。

 ”仮面”を脱ぎ捨てた彼女が灰色の人生に彩りを取り戻すのは、意外にもそう遠くない未来となるかもしれない。


● ● ●


 部活のない月乃が学校を出て家に向かっている途中、ふと声をかけられた。
 振り返るとそこには、幸薄そうな、それでいて”無垢”という言葉が似合いそうな女性が立っていた。歳は三十台半ばほどだろうか。

「月乃様・・・・・・でよろしかったでしょうか?」
「は? え・・・どこかで・・・?」
「いいえ、初対面ですわ。いつも柚子葉様がお世話になっております。わたくし、祥子(しょうこ)と申します」

 その言葉で、月乃の体がビクリと震えた。
 あの殺人鬼の少年の知り合いで、生きている人物は確か4人。
 その内、一緒に住んでいるのが2人。
 1人は(なにかの比喩表現なのか)オナニーばかりしている人形の死人。
 もう1人は、生きているが殺さない、彼の”好き”な人。

「えっと、もしかして、柚子葉くんのお母さん・・・とかですか?」
「母親代わり、といったところでしょうか」

 にっこりと微笑みながら、祥子と名乗る女性は意味深な言葉を返す。
 確かに本当の母親ならば、子供を様付けで呼んだりはしないだろう。

「月乃様は、柚子葉様が仰るには”死人”とのことでしたが・・・・・・そのようなことはなさそうですね。生き生きしていらっしゃいます」
「ど、どうも」
「ところで、月乃様は、柚子葉様のことを、どうお思いになられていますか?」
「え!? ど、どうって・・・それは・・・」
「ちなみに柚子葉様は、かなり月乃様に御執心でいらっしゃいます。口を開けば月乃様のことばかり」
「う・・・」

 思わず顔が赤くなるのを、俯くことで誤魔化そうとする月乃。
 その様子を見てくすくすと笑う祥子は、

「しかし柚子葉様は、恋愛感情というものがどういうものなのか、理解できておりません。ライクとラブの違いがわからないのです」
「・・・・・・そうですね、なんとなくそんな気がします」
「ですから相手が喜んでくれることをしようと考えるあまり、例えば月乃様が誰かを好きになった場合、その障害を排除しようと動かれるわけです。嫉妬だとか独占欲とは無縁なのですね」
「・・・はい」

 まさに昨日、絶望する月乃に「4人の女を殺して男を独占するか?」などと言ってのけたことを思い出す。
 ラブの好き、だったなら、普通、あそこであの言葉は出ないだろう。

「しかしそれは、”わたくし”という存在があることが前提です。月乃様が自分の元を離れても、最悪”わたくし”がそばにいるのだから、我慢できる・・・・・・そのように思われているのです」
「大事に、思われてるんですね」
「これでも柚子葉様の人生で、最も一緒にいる人物ということになっております」
「ご両親はどうしたんですか?」
「それはご本人の口からお聞きになってください」
「・・・・・・」

「しかし、今のままでは駄目なのです」

 ふと、終始穏やかだった祥子の表情に険しさが宿る。

「”依存”では駄目なのです。それではいつまでも、何も変わりません」
「・・・」
「このわたくしが、”あの日”の最後の生き残り。わたくしが近くにいる限り、柚子葉様の頭の片隅には常に”あの日”のことがよぎるのです」
「あの日?」
「柚子葉様の過去の結晶がわたくしだとすれば、月乃様こそが、柚子葉様の現在の結晶」
「?」
「わたくしは、柚子葉様の前から姿を消します。そして柚子葉様に、過去の決着を着けていただきます。それできっと、柚子葉様の殺人衝動は抑えられるはずなのです。人に触れても殺さずにいられるようになるはずなのです。ですから月乃様

 わたくしを失くした後の柚子葉様を、どうか、支えて差し上げてはいただけないでしょうか?」

「・・・・・・わ、わたしで、いいんですか・・・?」
「月乃様でなくては、ならないのです。”あの日”とは全くの無関係で、それでいて柚子葉様に想いを寄せられている、月乃様でなくては」
「・・・」
「わたくしたちは、莫大な財産を切り崩しながら生活しています。おそらく生涯使い切ることはないでしょう。それも、月乃様に差し上げます。すでに書面にしてあります。ですから、柚子葉様のこれからを、どうか支えて差し上げてくださいませ・・・」

「・・・・・・・・・わかりました。なんだかピンと来ませんけど、でも、でもあたしはあいつに何度も何度も助けてもらってます。通り魔から守ってもらって、死にたがっているときに蹴り飛ばしてもらって、沈んでるときにバカ話をしてくれて、浮かれてるときに一緒に笑ってくれて、一番苦しいときに駆けつけてくれた。あいつのためならあたしは、なんでもしてあげたい

 あたしは、あいつのことが、大好きですから」

 ライクではなく、ラブ。

 人を信じられず、人を心から好きになれないのは何も柚子葉だけではなかった。
 虐げられて、騙されて、心が傷ついて”死んで”いた月乃。
 それを、そんな自分を変えてくれた彼を変えてくれと頼まれたのなら。

 殺人鬼ではなく、1人の少年として生きてもらうために。
 2人で一緒に生きていくために。

「・・・・・・何年も待ち続けた甲斐がありました。ありがとうございます」

 祥子は深々と頭を下げて、それから微笑んだ。

「今夜9時、いつもの神社でお待ちくださいませ。今日が柚子葉様の殺人鬼としての最期の日。月乃様と会う頃には、もう人を殺すようなことはないはずです」

「わ、わかりました」

「それでは、さようなら」

 その時、どうして月乃は祥子の最後の微笑みを見て、鳥肌が立ったのだろう。
 なにか取り返しのつかないことが進行しているような気がする。

 しかしもう遅い。


 全ての決着は、今夜9時、始まりの神社で。


● ● ●


「お姉ちゃん! また出かけるの!?」

 夜8時50分。やや早めに出ておきたかった月乃は、玄関でこっそり靴を履いていたのだが、あっさりと日和に見つかってしまった。

「大丈夫、もう死ぬ気はないよ」
「で、でも殺人鬼が・・・・・・!」
「ううん、今日で多分、殺人鬼はいなくなるよ。そのためにあたしは、神社に行くんだから」
「?」
「あと、日和。ちょっと大事なことなんだけど・・・・・・」
「な、なに?」
「今日、家族が増えるかもしんない」

 口をあんぐりと開けて放心する日和を置いてけぼりにして、

「絶対外に出ちゃ駄目だよ。行ってきます!」

 月乃は家を出た。


● ● ●


 神社の境内の石畳を伝って、前方の拝殿をまっすぐに見据えてみる。
 そういえばこの神社には何度も足を運んだが、まともに拝んだことは一度もなかった。

「すべて丸く収まりますように」

 軽く手を合わせ、口に出してそんなことを拝んでみる。
 そして振り返って、まっすぐ続く石畳と鳥居を視界の中央に据える。

 全てここから始まった。

 通り魔に襲われて死のうとしているところを、殺人鬼のくせに助けてくれた。
 いや、あれはついでだったのかもしれないが。

 殺してくれと頼むと、あの少年はなんと顔面を蹴り飛ばしやがった。
 あれは痛かった。しかしあまり腫れなかったところを見ると、足加減してくれていたのだろう。
 厳しい言葉を投げかけられ、思いっきり凹んだ。

 けれど次の日も同じ時間に様子を見に来てくれた。
 やはり殺人鬼の癖に殺さないで、互いにバカなことを言い合った。
 妹を殺さないでくれと頼めば承諾してくれた。
 警官を誤魔化すために恋人ってことになった。
 お茶をくれたし、帰りは擬似的に手を繋いで帰った。

 恋人ができたと報告したら、嬉しそうな顔をしてくれた。
 変われていると、”生きて”きてると励ましてくれた。
 これからも会おうと約束してくれた。

 9時過ぎても来ない自分を心配して家まで行って、日和にいろんなことを吹き込んだ。
 そして雨の中ずぶ濡れになりながら、絶望する自分のもとへ駆けつけてくれた。
 あの男を一緒に恨んでくれたし、優しい言葉もかけてくれた。
 家に運んでくれたし、妹と和解するきっかけも与えてくれた。

 彼のおかげで、今自分は生きていると確信できる。
 彼と出会えなかったことを考えると、ぞっとする。
 これが俗に言う、運命の出会いというものなのかもしれない。

 今、自分は”生きて”いる。
 変わることが出来たと思う。
 彼がいる限り、もう死にたいなんて思うことはないだろう。


 自分は、彼を、愛している。


「・・・!」

 鳥居をくぐる人影が見えた。距離はあるが、あのシルエットは間違いなく彼だ。

 しかし・・・・・・どうにも様子がおかしい。
 足取りがおぼつかないというか・・・

「柚子葉!」

 月乃は自分から彼に歩み寄っていく。
 すると、

「来るなッ!!」

 思わず足がすくむほどの剣幕で、少年は怒鳴った。
 そしてその場で、がくりと膝を突いてへたり込んでしまった。

「・・・え? ・・・ええっ?」

 なにが起きているのかわからず、混乱する月乃。
 それでも一歩、また一歩と少年へ近づいていく。

 そして気が付く。

「な・・・・・・なんで・・・血まみれなの・・・? それ、誰の血・・・?」
「・・・・・・・・・」
「柚子葉・・・どうして・・・」

 月乃は彼の目の前まで来て、俯く少年の前に腰を下ろす。

「どうして、泣いてるの・・・?」

 その問いが引き金となったように、少年は堰を切ったように泣き出してしまった。

「う、うぅぅうううううううう~~~!!!」
「ちょっと、柚子葉・・・?」
「しょ・・・祥子を・・・・・・ころっ・・・ころしちまった・・・・・・!!」
「っ!?」

 ぞわり、と総毛立つのを感じた。
 悪い予感が的中してしまった、という感覚。
 しかしどうして・・・だって彼女は彼の前から姿を消して・・・・・・

 いや、待て。

「なんでっ・・・どうして、いきなりオレに触るんだよォ!・・・・・・13年も一緒にいて、なんでそんな・・・・・・よりにもよってナイフを持ってるときに・・・!!」

 わたくしは、柚子葉様の前から姿を消します。
 彼女はそう言った。
 ”どう姿を消すのか”、彼女は具体的に言っていただろうか。
 13年も一緒にいて、うっかり彼に触れて殺されるなんてことがあるだろうか。

 姿を消す。

 まさか。

「柚子葉・・・」
「触るな! 近づくな! アンタまで、アンタまで殺しちまったらオレは、どうしたらいいんだよ!!」
「柚子葉、聞いて。彼女、最期にあなたになにか言ってなかった?」
「・・・・・・」

 くしゃくしゃの顔を一瞬上げて、少年は考える。
 そして、

「わたくしが、最期の1人です・・・・・・とかなんとか」
「やっぱり」
「なんだよ、なにがやっぱりなんだよ!」
「今、人を殺したいとか思う?」

 ぽかん、と呆気に取られたように、へたり込んだまま硬直する少年。

「いや・・・別に。だって、さっき殺したばっかりで・・・」
「ねぇ、柚子葉。”あの日”ってなに? 一体、何があったの?」
「・・・! アンタ、祥子からなにか聞いたのか!?」
「言いたくないことならいいよ。でも、祥子さんは言ってたよ・・・自分が最後の生き残りだって。自分がいるから、柚子葉は悪いことを思い出すんだって。だから、」

 唐突に、月乃は少年が石畳に付いていた手に軽く触れた。
 ビクン、と体を跳ねさせて手を引っ込める少年だったが、しかしそれ以上のことは何も起こらない。
 殺されることはない。

「あ、アンタ一体なにを・・・!」
「祥子さんが言ってたよ。自分は過去の結晶だって。自分がいる限り、柚子葉は自分に依存して過去に縛られるって」
「・・・・・・」
「ほんとは、柚子葉自身は、自分の殺人衝動がなにに起因してるのか、わかってるんじゃないの? それを見抜いた祥子さんは、自分を殺させたんじゃないの?」
「・・・・・・そ、そんな・・・」

 頭を抱え、平伏す少年。
 そして小さく唸って、やがて口を開いた。

「”あの日”の関係者のほとんどに、オレは殺意を抱いていたんだ・・・・・・オレをあんなところに放り込んだ奴らも、助けてくれなかった奴らも、みんな・・・・・・」
「うん」
「だから同じ被害者である純だけは、触っても反射的に殺すようなことはなかった・・・・・・」
「うん」
「けど・・・・・・”子供部屋”に食事を運んでくる、祥子も、当時は憎んでた・・・大人なのに助けてくれなかったから・・・・・・」
「うん」
「心のどこかで・・・・・・”子供部屋”から出た後、オレを3年も閉じ込めて、純を見殺しにした祥子を、憎んでなかったわけじゃない・・・・・・でもだからって・・・!!」

 無意識で祥子に向けていた殺意が募り、殺人衝動となった。
 それを、大好きな祥子以外に向けて発散させていた。
 しかし一緒に暮らしている2人は毎日顔をあわせる。
 だからいつまで経っても柚子葉は殺人鬼のままだった。

 祥子は待っていたのだ。

 いつか自分が殺されたとき・・・・・・”殺させた”ときに、柚子葉の支えになってくれる人物が現れるのを。

 何年も、何年も何年も待ち続け、そしてようやく現れたのが・・・・・・


 月乃だった。


 ぎゅっ、と月乃は柚子葉を抱きしめた。
 反射的にガタガタと体を震わせる柚子葉だったが、しかし月乃が殺されるようなことはなかった。

「やめ・・・てくれ・・・殺しちまう・・・・・・オレが触った奴はみんな死ぬんだ・・・・・・アンタだろうと・・・・・・」
「それはあなたが勝手に思い込んでるだけ。あたしが憎い? あたしを殺したい? あたしがあなたをどうにかすると思う?」
「・・・・・・・・・」
「もう殺さなくていいんだよ。あたしが”死人”を卒業したみたいに、あなたも”殺人鬼”を卒業しよう?」
「・・・・・・・・・」
「あたしと一緒に、これから”生きて”いこう。死なないで、殺さないで、生きていこう?」

 月乃の背中に、柚子葉の手が回された。
 指が食い込み、ミシミシと音を立てる。

 痛い。

 痛い? 結構だ。死んでいる頃は、痛みを感じる心さえ死んでいた。


 痛いなら、生きているんだ。


「もう殺さなくていいのか」
「うん」
「一緒に生きてくれるのか」
「うん」
「・・・今だけ泣いていいか」
「・・・うん」

 神社に嗚咽が響く。

 それから長い間、2つの影は抱き合って動かなかった。



 こうして死にたがりの少女と、殺人鬼の少年がかつて出会ったこの神社で、あらゆる問題に決着がついた。



 その日から、この町での連続殺人事件はぱったりと収まった。

 灰色の人生に彩りが戻っていった。


 そして、普通の少女と普通の少年に、かけがえのない恋人ができた。


● ● ●


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まとめteみた.【第四話】

「・・・おはよ、お姉ちゃん」「え? 日和、まだ早くない? まだ6時にもなってないよ?」「ううん、なにか、手伝おうと思って・・・」 言いながらも、日和は眠そうに目を擦っているところだった。 名前に反して、日和は朝に弱く、月乃は徹夜が出来ないのだ。 なるべ...

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